神式葬儀(神葬祭)に参列する際、「香典の表書きはどう書けばよいのか」「仏式と同じ作法で失礼にならないか」と頭を悩ませていませんか。
神道では仏教とは死生観や儀礼が根本から異なるため「御霊前でよいのか」「御玉串料と書くべきか」といった独自のルールに戸惑い、不安を感じる方も少なくありません。
しかし、事前に基本的な違いとマナーのポイントさえ押さえておけば、葬儀当日に慌てる心配はありません。
神式特有の考え方を深く理解することは、失礼を避けるだけでなく、故人への敬意と遺族への丁寧な思いやりを伝えることにも繋がります。
この記事でわかること
- 神式葬儀における香典(玉串料)の正しい書き方と表書きの使い分け
- 故人との関係性や自身の年齢に応じた最新の金額相場一覧
- 神式にふさわしい不祝儀袋(香典袋)の選び方と水引のルール
- 中袋の書き方や、神式ならではの渡し方のマナー
- 初めての参列でも安心できる「よくある間違い」への対処法
本記事では、神式葬儀における香典の作法を体系的に解説します。よくある疑問点も網羅していますので、参列前のガイドとしてぜひ参考にしてください。
神式葬儀の香典はどう書く?最初に押さえる基本ルール
神道形式で行われる葬儀(神葬祭)に参列する際、最も多くの方が戸惑うのが不祝儀袋の書き方と扱いです。まずは、私たちが慣れ親しんでいる仏式との決定的な違いを理解しましょう。
仏式との死生観・作法の違い
日本で行われる葬儀の約9割は仏教形式ですが、神道の「神葬祭」では、死に対する根本的な考え方が異なります。
仏教では、亡くなった方の冥福を祈り、極楽浄土へ送り出すための供養を行いますが、神道では故人を「家の守り神(守護神)」として祀り、子孫を末永く見守ってもらうための儀式として執り行われます。このため、言葉の選び方一つにも注意が必要です。
ここが違う!神式の基本作法
- お焼香はしない:代わりに、榊(さかき)の枝を供える「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」を行います。
- 香典とは呼ばない:持参する金銭は「お香典」ではなく、「玉串料(たまぐしりょう)」と呼ぶのが正式です。
- デザインに注意:仏教を象徴する「蓮(はす)の花」が描かれた袋は絶対に使用できません。
表書きは何を書くのが適切か
不祝儀袋の表書きには、宗教に合わせた適切な言葉を選ぶ必要があります。神式で最も一般的な書き方と、迷った際の対処法を見ていきましょう。
「御霊前」は神式でも使える?
結論から言うと、「御霊前(ごれいぜん)」は神式の葬儀で使用しても問題ありません。
神道では、亡くなった方の御霊(みたま)は、葬儀を経て「五十日祭」という節目の儀式を迎えるまでは「霊」として存在し、その後に家の守り神になるとされています。
そのため、葬儀の段階では「御霊の前にお供えする」という意味でこの言葉を使うことができます。
「御霊前」は仏教(浄土真宗を除く)やキリスト教(カトリック)でも共通して使えるため、宗教がはっきりしない場合の無難な選択肢としても重宝されます。
「御玉串料」「御榊料」「御神前」の違い
神式葬儀で最も正式かつ一般的な表書きは「御玉串料(おたまぐしりょう)」です。これは「儀式で捧げる玉串の代わりにお供えする金銭」という意味を持ちます。
同様の趣旨で、榊(さかき)をお供えする料という意味の「御榊料(おさかきりょう)」と書くこともあります。
一方、「御神前(ごしんぜん)」という表現もありますが、これは厳密には故人が守り神となった後(五十日祭以降)の法要などで使われることが多い表現です。
葬儀の場で迷った際は、最も汎用性の高い「御玉串料」を選ぶのが確実で間違いありません。
神式葬儀の香典袋の選び方
神式の葬儀で使用する不祝儀袋は、「無地の白い封筒」を選ぶのが基本中の基本です。市販の袋の中には、以下の点に注意して選ぶ必要があります。
- 避けるべきデザイン:蓮の花の型押しや印刷があるもの(仏教用)、十字架や百合の花(キリスト教用)は避けましょう。
- 水引(飾り紐)の色:「黒白」または「双銀(銀一色)」を選びます。
- 金額とのバランス:一般的に、5,000円〜1万円程度なら黒白、3万円以上の高額を包む場合は双銀や高級和紙の袋を選ぶと見た目のバランスが良くなります。
- 結び方:一度結んだらほどけない「結び切り」や「あわじ結び」を選びます。これには「不幸が二度と繰り返されないように」という願いが込められています。
神式葬儀の香典の金額相場【関係性別一覧】
包む金額(玉串料)の相場は、基本的には仏式の香典と大きな違いはありません。
しかし、故人との関係性の深さや、自身の年齢、社会的な立場によって変動します。以下の相場表を参考に、無理のない範囲で検討しましょう。
| 故人との関係性 | 20代の方 | 30代の方 | 40代以上の方 |
|---|---|---|---|
| 両親 | 3万円 〜 10万円 | 5万円 〜 10万円 | 10万円 〜 |
| 兄弟・姉妹 | 3万円 〜 5万円 | 3万円 〜 5万円 | 5万円 〜 |
| 祖父母 | 1万円 | 1万円 〜 3万円 | 3万円 〜 5万円 |
| 親戚(叔父・叔母等) | 1万円 | 1万円 〜 2万円 | 2万円 〜 3万円 |
| 友人・知人 | 5,000円 | 5,000円 〜 1万円 | 1万円 〜 |
| 会社の上司・同僚 | 5,000円 | 5,000円 〜 1万円 | 1万円 〜 |
金額を決める際の注意点
避けるべき数字とマナー
- 忌み数を避ける:「死」を連想させる「4」や、「苦」を連想させる「9」がつく金額(4,000円、9,000円など)は厳禁です。
- 奇数が好まれる:偶数は「割り切れる=縁が切れる」とされるため避けられてきましたが、現代では「2万円」はペアという意味で許容されることもあります。迷ったら1、3、5、10といったキリの良い数字を選びましょう。
神式葬儀の香典袋(玉串料)の包み方と中袋の正しい書き方
神道形式の葬儀(神葬祭)において、不祝儀袋(玉串料)を準備する際には、現金の入れ方や金額・住所の記載方法など、細かい部分にも厳格な決まりが存在します。
ここでは、遺族に対して失礼のない中袋(中包み)の記入方法から、お札の向き、水引の選び方に至るまでを詳しく解説します。
中袋の金額の正しい書き方(大字・旧字体)
中袋の表面中央には、包んだ現金の合計金額を記載します。
この際、数字の書き換えや改ざんといったトラブルを防ぐため、日常的に使う数字ではなく、漢数字の「大字(だいじ)」と呼ばれる旧字体を使用するのが正式なマナーです。
【神式で使われる主な大字一覧】
- 一 ➡ 壱(いち)
- 二 ➡ 弐(に)
- 三 ➡ 参(さん)
- 五 ➡ 伍(ご)
- 十 ➡ 拾(じゅう)
- 千 ➡ 阡(せん)
- 万 ➡ 萬(まん)
書き方のルールとして、金額の頭には「金」をつけ、最後には「圓(または円)」を書き添えます(例:金壱萬圓)。
また、末尾に「也(なり)」をつけるかどうかは任意ですが、つけても間違いではありません。
住所と氏名の正確な記載方法
中袋の裏面には、左下のスペースに自身の住所と氏名を記入します。これは遺族が葬儀の後に整理を行い、お礼の挨拶や返礼品(偲び草)の手配をする際に必要不可欠な情報です。
郵便番号やアパート・マンション名、部屋番号まで省略せずに、正確かつ丁寧に、読みやすい文字で書くよう心がけましょう。
なお、表書きは筆ペン(薄墨)が基本ですが、中袋に関しては遺族の読みやすさを優先し、黒のサインペンやボールペンを使用しても許容されることが一般的です。
新札(ピン札)は使ってもよい?お札の向きのルール
弔事においては、新札(ピン札)を使用することは「不幸があることを予期してあらかじめ準備していた」と連想させるため、避けるべきという古い慣習があります。
そのため、適度に使用感のあるお札(流通しているお札)を使うのがマナーです。もし手元に新札しかない場合は、一度半分に折ってから包むのが賢明です。
お札を中袋に入れる向きにも作法があります。
- 表裏:お札の肖像画が描かれている面が、袋の「裏面」を向くように入れます。
- 上下:肖像画が袋の「底側(下側)」に来るように配置します。
これは「悲しみで顔を伏せる」という意味合いが込められた伝統的な包み方です。
水引の種類とふさわしい選び方
神式葬儀(神葬祭)で使用する水引の色は、「黒白」が基本となりますが、地域性や包む金額によっては「双銀(銀色のみ)」や「双白(白のみ)」が使われることもあります。
金額に応じた水引の使い分け
- 5,000円〜3万円程度:一般的な黒白の水引の袋で問題ありません。
- 5万円以上の高額:格の高い「双銀」の水引がついた、厚手の和紙で作られた高級な袋を選ぶと、金額とのバランスが取れます。
結び方は、慶事のような「蝶結び(何度も結び直せる)」ではなく、一度結ぶとほどけない「結び切り」または「あわじ結び」のものを選んでください。
これには「不幸が二度と繰り返されないように」という切実な願いが込められています。
神式葬儀における玉串料の渡し方と適切なタイミング
心を込めて用意した玉串料も、渡すタイミングや言葉遣いを間違えては台無しです。
受付での振る舞いや、参列できない場合の郵送マナーを確認しましょう。
香典(玉串料)を渡す最適なタイミング
通夜祭(通夜)や葬場祭(告別式)の会場に到着したら、まず受付に向かいます。渡すタイミングは、受付で記帳を行う際です。
もし通夜祭と葬場祭の両方に参列される場合は、一般的に「最初に訪れる通夜祭」のタイミングで渡すのがマナーです。
葬場祭の受付でも再度記帳を行いますが、その際は受付の方に「昨日もお参りさせていただきました」と一言添え、金銭を重ねて渡す必要はありません。
受付で添えるべき「挨拶の言葉」
受付で玉串料を差し出す際、つい口にしがちな「ご冥福をお祈りします」という言葉は、仏教用語であるため神式では使用しません。
神式でふさわしい挨拶例
- 「御霊(みたま)のご平安をお祈り申し上げます」(最も丁寧で適切な表現)
- 「この度はご愁傷さまでございます」
- 「突然のことでお悔やみ申し上げます」
渡す際は、必ず鞄やポケットから直接出すのではなく、袱紗(ふくさ)から取り出します。
袱紗の上で袋を、相手(受付の方)から見て文字が正しく読める向きに反転させ、両手を添えて丁寧に差し出しましょう。
遠方で参列できない場合の郵送マナー
事情により参列できない場合は、現金書留で郵送します。この際、現金をそのまま現金書留封筒に入れるのは避け、必ず用意した不祝儀袋(玉串料の袋)に現金を包んでから、現金書留の専用封筒に入れるのがマナーです。
また、品物だけを送るのではなく、参列できないお詫びと哀悼の意を綴った「お手紙(お悔やみ状)」を同封しましょう。
宛先は喪主名とし、葬儀会場へ送る場合は「〇〇斎場 気付」として、式の日時に間に合うよう手配します。
神式葬儀の香典(玉串料)でよくある間違いと注意点
不慣れな神式葬儀では、良かれと思って行ったことが失礼にあたる場合があります。よくある失敗例を事前に把握しておきましょう。
「御仏前」と書いてしまった場合の対処法
最も多いミスは、表書きに「御仏前」や「御香典」と書いてしまうことです。「仏」や「香」といった文字は仏教に基づく言葉であり、神道には適しません。
もし渡す直前に間違いに気づいたなら、可能であればコンビニなどで新しい白無地の袋を購入し、書き直すのがベストです。
どうしても時間がなく修正が間に合わない場合は、受付で「不調法(ぶちょうほう)で神式の用意ができず、申し訳ございません」と一言お詫びを伝えてから渡すのが、誠実な大人の対応です。
袱紗(ふくさ)を必ず使用すべき理由
不祝儀袋を裸のまま持参したり、スーツのポケットから無造作に取り出したりするのはマナー違反です。
袱紗に包むことは、袋の破損や汚れを防ぐ実利的な意味だけでなく、「故人や遺族への敬意を払い、大切なものを汚さぬよう丁寧にお持ちしました」という慎み深い気持ちの表れです。
弔事用には、紫や紺、グレーなどの寒色系の袱紗を使い、左開きになるように包んで持参しましょう。
香典返し(偲び草)に関する考え方
神式であっても、いただいた玉串料に対してお礼の品を贈る習慣は存在します。
これを神式では「偲び草(しのびぐさ)」と呼びます。 一般的には「五十日祭(忌明け)」を無事に終えた報告を兼ねて贈られます。
参列者側としては、あまりに少額の玉串料に対してお返しを期待するのは遺族の負担となります。
その場合は、中袋の端に「お返しは辞退させていただきます」と一筆添えるなどの配慮を検討するのも、ひとつの優しさです。
神式葬儀の香典に関するよくある質問(FAQ)
記事全体のまとめ
神式の葬儀(神葬祭)は、故人を「家の守護神」として祀る、日本古来の精神に基づいた厳粛な儀式です。
仏教とは死生観が根本から異なるため、持参する金銭を「玉串料」と呼び、お悔やみの言葉として「ご冥福」を使わず「平安」を祈るといった特有の作法を守ることが、遺族への最大の敬意となります。
不祝儀袋の選び方や包み方、金額相場など、形式的なルールは多岐にわたりますが、最も大切なのは「故人を安らかに送り出したい」という真心です。
この記事で紹介したマナーを参考に、落ち着いて準備を進めていただければ幸いです。




