葬儀に参列する際、「果物を供えても失礼にならないのか」「どんな果物を選べばよいのか」と迷う方は多いのではないでしょうか。
香典やお花と違い、果物は選び方やマナーが分かりにくく、不安を感じやすい供物のひとつです。
葬儀で果物を供えることには意味があり、適した種類や飾り方、宗教・宗派ごとの考え方にも違いがあります。
この記事では、葬儀で果物を供える際に知っておきたい基本的なマナーや注意点を、分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 葬儀で果物を供える本来の意味と由来
- 供物に適した果物と避けるべき果物の見分け方
- 盛り方や「のし紙」に関する作法とマナー
- 宗教・宗派によるお供えの考え方の違い
葬儀で果物を供える意味・由来
葬儀の場で果物を供えることには、故人への感謝や死後の安寧を願う深い意味が込められています。
ここでは、なぜ数ある品物の中から果物が選ばれるのか、その宗教的な背景や精神的な理由について解説します。
なぜ葬儀で果物を供えるのか
葬儀や法要において果物を持参したり飾ったりするのは、「飲食供養(おんじきくよう)」と呼ばれる考え方が根底にあります。
これは、仏様やご先祖様に対して食べ物を捧げることで、日頃の感謝や敬意を表現する行為とされています。
また、果物は彩りが豊かであり、厳粛な場である祭壇や仏壇に季節感や視覚的な美しさを添える役割も果たしているのです。
果物が供物として選ばれてきた背景
古くから果物が供物として重宝されてきた背景には、仏教の教えが関係しています。
仏教では生き物の命を奪うこと(殺生)を避けるため、肉や魚などの「生臭物(なまぐさもの)」を供えることはタブーとされてきました。
その点、果物は殺生にあたらず、清浄な供物としてふさわしいと考えられています。
また、丸い形をした果物は「円」を描くことから「縁」につながるとされ、故人とのつながりを大切にする意味でも好まれてきました。
五供(ごくう)における果物の位置づけ
仏教には、供養の基本となる「五供(ごくう)」という考え方があります。
これは「香(お線香)」「花(供花)」「灯燭(ろうそくの灯り)」「浄水(清らかな水)」「飲食(食べ物)」の5つを指します。
このうちの「飲食」において、炊きたてのご飯などと共に、果物は代表的なお供え物として位置づけられています。
葬儀で果物を選ぶ際の基本ルール
お供え用の果物を選ぶ際には、単に美味しそうなものを選ぶのではなく、儀式の場にふさわしい形状や日持ちなどを考慮する必要があります。
葬儀に適した果物の特徴
葬儀に適しているのは、常温でも傷みにくく、日持ちのする果物です。葬儀から法要までの数日間、祭壇に飾られたままになることが多いため、鮮度が落ちにくいものが重宝されます。
また、形状としては「丸いもの」が良いとされています。球体は「円=縁」を連想させ、故人との縁などの縁起が良いとされるほか、魂の形になぞらえているという説もあります。
避けた方がよい果物の例
避けるべきなのは、傷みやすいものや、周囲に迷惑をかける可能性があるものです。
避けるべき果物の特徴
- 熟すのが早く腐りやすいもの
- 水分や汁が出やすいもの
- 香りが強すぎるもの(メロンの強い芳香やドリアンなど)
季節の果物を選んでも問題ないか
基本的には、その時期に旬を迎える季節の果物を選ぶことは推奨されています。季節感のある供物は、故人に四季の移ろいを感じてもらうという意味でも喜ばれます。
ただし、旬のものであっても、前述した「傷みやすさ」には注意が必要です。夏場であればメロンやスイカなどが定番ですが、桃などは柔らかく傷みやすいため、管理しやすい状態のものを選ぶなどの配慮が求められます。
葬儀に適したおすすめの果物一覧
具体的にどのような果物を選べばよいのか迷った際のために、推奨される果物を紹介します。
| 種類 | 代表的な果物 | 特徴・メリット |
|---|---|---|
| 定番・日持ち | リンゴ、梨、オレンジ、グレープフルーツ | 常温で傷みにくく、形が丸いため縁起が良い。 |
| 高級・格式 | マスクメロン、桐箱入りサクランボ | 百貨店などのブランド果物は遺族への丁寧な印象。 |
| 季節・彩り | キウイ、柿、スイカ | 祭壇に季節感と豊かな色彩を添えられる。 |
故人の好物を供えてもよいか
基本的には、故人が生前好んで食べていた果物を供えることは、大変心のこもった供養となります。たとえバナナやイチゴのように傷みやすい果物であっても、故人の好物であれば許容されるケースが多いです。
ただし、その場合はご遺族に「傷みやすいので早めに召し上がってください」と一言添える配慮をすると親切です。
葬儀で果物を供える際の飾り方・盛り方
果物を供える際には、見栄え良く飾るための道具や、配置に関する作法があります。
果物の盛籠(かごもり)とは
「盛籠」とは、葬儀や告別式の祭壇近くに飾るために、果物や缶詰、お菓子などを大きな籠に見栄え良く詰め合わせ、装飾したお供え物のことです。
個人で用意する小さな詰め合わせとは異なり、祭壇を豪華に彩る役割も果たします。通常は葬儀社や専門業者を通じて手配され、名札を立てて送り主を明確にします。
祭壇や仏壇への正しい置き方
葬儀会場の祭壇に飾る場合、一般的にはご自身で勝手に置くのではなく、受付や葬儀社スタッフに渡して配置を任せます。
自宅の仏壇に供える場合は、中段または下段に配置するのが一般的です。その際、「高杯(たかつき)」と呼ばれる足のついた器や供物台を使用し、半紙を敷いてから果物を乗せると丁寧です。
果物を供える際の数や向きのマナー
果物の個数は、割り切れない数字である「奇数」にするのが好ましいとされています。偶数は「割り切れる=縁が切れる」と連想され、弔事では避けられる傾向があります。
特に「4(死)」や「9(苦)」といった忌み数も避けるのがマナーです。一般的には3個、5個、7個といった数で用意します。
葬儀で果物を贈る場合のマナー
果物を持参したり送ったりする際には、相手に失礼のないよう適切なタイミングや包装のマナーを守る必要があります。
果物を持参するタイミング
葬儀に持参する場合、通夜や告別式の開始直前は遺族が慌ただしいため避けるべきです。理想的には、通夜当日の午前中、または式の開始時間よりも余裕を持って到着するようにしましょう。
のし紙・表書きの書き方
のし紙の基本ルール
- 水引:黒白の結び切り(一度きりの悲しみを表す)
- 表書き:仏式は「御供」「御供物」が一般的
- 名前:水引の下に贈り主の氏名をフルネームで記入
四十九日前であれば「御霊前」、それ以降は「御仏前」と使い分けることもありますが、「御供」であれば時期や宗派を問わず広く使えます。
葬儀で果物を選ぶ際に宗教・宗派によるの違い
宗教ごとの考え方の違いと適切な対応について解説します。
仏教・神式・キリスト教の比較
| 宗教 | 果物のお供え | 注意点 |
|---|---|---|
| 仏教 | 推奨される | 「五供」の一つ。肉・魚などの殺生を避ける。 |
| 神道(神式) | 推奨される | 「神饌(しんせん)」として米・酒などと共に捧げる。 |
| キリスト教 | 基本的には行わない | 生花(供花)が一般的。贈りたい場合は要確認。 |
キリスト教では盛籠のような果物の詰め合わせを贈ることはマナー違反とみなされる場合があります。生花やお花代(献花料)にするのが無難です。
果物を葬儀ではなく法要やお墓参りで供える場合
葬儀が終わった後も、果物を供える機会は続きます。
お墓参りで果物を供える際の注意点
お墓参りで果物を供える際、最も重要なのは「持ち帰る」ことです。
供えたままにしておくと、カラスや野生動物に荒らされたり、腐敗して墓石を汚したりする原因になります。
お供えをして手を合わせた後は、その場ですぐに下げるか、「お下がり」として自宅に持ち帰り、家族でいただくのが正しいマナーです。
葬儀の果物に関するよくある質問
果物だけを供えても失礼にあたらないか
果物だけをお供えしてもマナー違反ではありませんが、現代では香典も併せて持参するケースが増えています。予算的に厳しい場合は香典だけでも十分失礼にはあたりません。
果物の相場はいくらくらいか
- 個人的に持参する場合:3,000円 〜 5,000円程度
- 本格的な籠盛りの場合:10,000円 〜 20,000円程度
供えた果物はいつ下げるべきか
葬儀会場の盛籠などは、式の終了後に親族や参列者で分け合うのが一般的です。自宅の仏壇に供えた果物については、傷んでしまう前に下げ、「お下がり」として家族でいただきます。
記事全体のまとめ
葬儀の果物マナーの重要ポイント
- 選び方:常温で日持ちし、丸い形のもの(リンゴ、梨など)が最適
- 個数:割り切れない「奇数」で用意し、忌み数(4や9)は避ける
- のし紙:黒白の結び切りで、表書きは「御供」とする
- 配慮:宗教(特にキリスト教)や、夏場の傷みやすさに注意する
何よりも重要なのは、故人を偲び、遺族を慰めようとする気持ちです。迷った際は葬儀社や年長者に確認しながら準備を進めると良いでしょう。




